嫌がられる打者・イチロー


人並みに草野球はやったから、ボールを遠くに飛ばすのが至難の業というのはよくわかる。

おのれの打撃を振り返っても、たまに出る長打はエラーがらみにすぎず、ほとんどはたわいもないゴロで、内野手に軽く処理されていた。

テレビで見る限り、イチローの打球は自分と同じ、たわいもないゴロにみえる。それがなぜか大リーガーでも獲りきれない。1塁でアウトに出来ないのである。

ピッチャーは最初、討ち取ったとニンマリしていたに違いない。ところが、なぜかアウトにできないのである。

何度もこれをやられると、消化不良なストレスが溜まる。試合に負けるとなるとなおさらである。被害にあったピッチャーは終日憂鬱だろう。

プロの世界で内野ゴロがヒットになる確率はきわめて低い。しかし、内野手のもっともいやな場所に遅すぎるゴロが届いたときには、いくら強肩でも1塁に刺せない。

としてみると、イチローはまさにそこを狙ってわざとゆっくりしたボールを運んでいるということになる。

われわれは振り遅れてゴロになる。イチローは照準を合わせてゴロにしている。それが200本安打を可能にしているのだと了解した。ボンフライが安打になるのも同様で、安打になるようなボンフライを打っているということになる。

スタンドに放り込むのが大打者だと思っていたアメリカ人に、どうも妙な男があらわれたと怪訝な顔でみられていたが、7年も200本安打をつづけるとなると、これはただ事でない。大リーグの歴史にない人物が現れたと、今になって大騒ぎしている。

あのひ弱げなイチローが大リーグを目指したとき、そんな大それたことをしなくてもという声がよく聞かれた。

脚光をあびてなおマスコミとのあいだに壁を取り払おうとしない彼の言動は、パワーしか信じなかったものへの痛烈な批判のようにもとれる。

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