台風の目

台風はなにも最近になって来始めたわけではない。平安期の「扶桑略記」に台風襲来の記述があり、鎌倉期には博多に押し寄せた10万の元の大軍が、台風によって沈没している(弘安の役)。

昔から、わが国は台風とは切っても切れない間柄である。

悪意に満ちた台風

南の海上で発生した台風が北上してどの進路を辿るかは、太平洋高気圧の勢力に左右されるだろうが、今回の台風12号は日本本土に近づくや、あたかも悪意をもっているかのごとく逆走して、西日本豪雨で刻まれた傷口をなぞるように通り過ぎた。彼にとってみれば、ドミノ倒しに似た快感だったのではないか。いかにも人の弱みに付け込んだ、底意地の悪さを感じずにおれない台風であった。

例年愛媛県は台風の目に留まらぬと見えて、通り過ぎることが多い。が、先日の西日本豪雨では、南予を中心に相当なダメージを受けた。こんなことになるとはというのが、一致した住民の声であった。

相手を甘く見て油断するとしっぺ返しを食らうこと、まるで生き物のようである。あらかじめ、住民に避難を呼びかけ、被害を小さくできなかったかと悔やまれてならない。

台風はなぜ曲がるか?

台風の正体はフィリピン近くの海上に発生した低気圧である。海水が温められて水温が上がると、水蒸気となって空気の渦が発生する。すると風が周囲から中心に向かって吹き込むため、上昇気流が発生し、雲ができて雨となる。これがどんどん大きくなると台風になることは学校で学んだ。

台風がまっすぐ北へ向かわないのは、日本の南に居座る太平洋高気圧の勢力に押されるからで、台風は遠慮がちにその西側をそっとカーブしながら北上する。したがって太平洋高気圧の勢力が強い7~8月は、日本より西の韓国、中国方面に進む。秋になって勢力が弱くなると東に寄るから、ちょうど日本に向かう計算になる。

台風を消し去るには

毎年、嫌がっても彼は必ずやってくるのだから、先手を打ってなんとか押しとどめる法はないだろうか。

そもそも海面の水温が上がらなければ台風は発生しないのだが、南海の水温をピンポイントでも下げるのは不可能に近い。

また、台風が接近したと聞けば、のんびり北からの寒気が下りるのを待つわけにはいかない。

それより、台風も発生したばかりの時なら、子供台風で扱いやすそうだ。

おとなに発育するまで、手をこまねいて待つ手はないだろう。できれば子供のうちに手なずけて、方向を転換させることはできないか。

あるいは発生しかかった段階で、うやむやにする手立てはないだろうか。

それとも、北半球では台風は反時計方向へ回転しているそうだから、無風地帯といわれる台風の目に入って、温度を一気に下げて低気圧を解消するか、回転の速度を弱める工夫はできぬものか。

ところが自分の勝手な判断で、台風の目のサイズはせいぜい100mほどかと思っていたら、じつは数キロから100キロに及ぶと聞いて、もはや素人の口出しする幕ではないと観念した。

AI(人工知能)への期待

ただ、八方ふさがりのなかにも、少しばかり期待するむきがある。

10年ほど前から、AI(人工知能)の活躍が衆目を集めるようになってきた。

ディープラーニング(深層学習)の開発とビッグデータの集積により、AIの問題解決能力がひとの能力を凌駕し始めたというのである。確かに、囲碁や将棋の天才がAIに降参する事態となっている。

その道の人に聞くと、今は人間に近い振る舞いをするAI(人工生命)をつくることに専念しているという。さらには、ひとの意識をデジタルで表現できるAI(人工意識)まで創ろうとしていると聞いて仰天した。

このぶんだと、自分の浅はかな提言など何の役にも立たない。台風問題はそのうちきっと、AIが解決してくれるだろうと確信した次第である。

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