コマーシャル雑感

テレビは見るばかりが能でない。目をつむり、耳を澄まして聞くのも一興だろう。

特にコマーシャル(CM)で、そうおもう。

もともと視聴者は、見たくもないものを仕方なく見てあげているんだという不遜な立場にいる。

一方、スポンサーは視聴者の視線を感じながら、ほかのチャンネルへ切り替えられないよう、あの手この手で気を引くのに躍起である。

ドラマはどうでもいいから、CMだけは見てほしいスポンサーと、CMは飛ばしてドラマだけを見たい視聴者とのせめぎあいである。

多くは僅かな時間に、これでもかというほど宣伝文句を繰り返すため、視聴者の不興を買うことが多い。これでは駄目だと気付くと、今度は人気女優や有名人を使って、おやっと思わせたり、漫才のコントで笑いをとろうとする。

それに飽きられると、ショートラブストーリーで視聴者をいい気分にさせたり、「一体何のコマーシャル?」と相手の不審を引き付けておいて、最後に肝心な宣伝をさらっと伝えるなどの高等技術を駆使するようになる。

いずれも、瞑目して耳だけで聴くと、CM製作者の苦心のあとが分かり、納得することも多い。

ところが今日、テレビの録画・再生を利用するひとが増えるに及んで、コマーシャルは早送りで飛ばされる運命となった。スポンサー各位には誠にご愁傷様と申し上げるほかない。

健康食品のCM

話が変わるが、仕事柄、健康食品のCMに目が向くことが多い。

ここでは、なんといっても効いたかどうかが問題で、どんな美人が出て美辞麗句を並べてもだめである。

CMでは、この健康食品で私は元気になった、あるいは治ったという人たちがつぎつぎに登場する。効いた効いたと連呼することが大事なのだ。効かなかったひとも大勢いるだろうが、そんなひとは決して登場させない。

どれだけの人が服用して、そのうちどのくらいのひとに効いたかを知りたいのだが、各社とも決してそれを口にしない。結局、どの程度効果があるのかは誰にもわからないのだ。

もともと健康食品というものはそういうものだ。ときに薬だと勘違いする人もいるが、そうでないからには、決して病気が治るなどと期待してはいけない。

おおかた、視聴者もそのへんの事情は納得済みで、だれにでも効くなどとは思っていない。ところが相手は一枚上にいる。それを見越してさらに、視聴者の心をくすぐってくる。

たとえばこんなのがある。

「今から1時間以内にかぎり、テレビをご覧になっているかた先着100名様まで半額で提供します」という。このお得感に庶民は弱い。時間を限られると、判断力を失う。ここをうまく突いている。

だが冷静になって考えれば、在庫をかかえ、半額で在庫処分してでも至急現金が欲しいという裏事情も、予測できないわけではない。

また、「品切れ真近、今すぐお電話ください」などというのも同様の作戦とみえる。

皮肉っぽい見方だが、売れておればわざわざ宣伝する必要はないだろう。よほど売れないから宣伝費をかけて購買欲をあおり、冷静に判断させないため、時間がないと急かせているのではともとれる。

なかにはこんなのもある。

初回はなんと0円で提供します。送料も無料ですという。

ウーン、本当にただなら誰だって飛びつく話しだ。しかし、お金をかけてわざわざ無料だと言うからには必ず裏がある。第一、0円でいいなどと言うひとは、資金繰りには困っていない。さしあたっては顧客を増やしたいのだろう。最初は格安商品を紹介して安心させ、それからぼちぼち儲けさせてもらうという胸算用ではないか。最終的には必ず元を取らせてもらいますよという本音が見え隠れする。

われわれは、あとちょっとで売り切れなどという文句に弱い。子供のころ、よくこの手の誘いに引っかかって失敗した経験がある。ところが、いつまでたってもこの癖は治らないらしく、いまだにこの手の誘惑に引っかかってしまう。

したがって、こちらが引っかかっているうちは、相手もその手を引っ込めないだろう。

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